Andersonの強みの1つにファイナンス分野があります。実務界でも学術界でも著名な教授陣が数多く在籍し、また卒業後ファイナンス分野に進む学生も比較的多いです。以下、特色あるファイナンス系のelective 授業について幾つかご紹介します。(※最新の状況と異なる可能性がある点、ご了承下さい)

 

Corporate Finance

多くのFinanceの選択科目でprerequisiteとなる科目。複数の教授により講座が開かれており、中でもDean Bernardoは、25年の教授歴に裏付けされた分かりやすい教え方に定評があり、teaching awardも取るなど、看板教授の一人です(Deanとしてご多忙のため、開講されているコマが少なく、取れたらラッキー!)。必修科目であるFoundation of financeの応用という位置づけで、内容としてはdebt financeによる減税効果及び最適な資本構成の考え方、WACCの応用とバリュエーション、リアルオプション、M&Aなど多岐にわたります。

 

Corporate Financial Reporting

このクラスでは、Financial statement analysis、つまり、会計制度に従って作られた数字が実際の企業活動とどのようにリンクしているのかを分析することが授業の中心です。扱われるトピックは売上・費用認識から年金、ストックオプションまで多岐に渡ります。ケーススタディが中心の授業で、実際の年次報告書やSEC Filingsを抜粋したものを使用しており、企業業績の分析の視点が学べます。また、業績関連ニュースを理解する際の感覚も身につきますので、最もビジネススクールらしい授業の一つと言えます。

 

Takeovers, Restructuring, and Corporate Governance

投資銀行で30年間働いた教授によるM&Aを基本から学ぶことのできる授業です。Andersonのファイナンスの中で最難関の授業でもあり、投資銀行、PE、M&Aアドバイザリーを目指している方へおすすめです。授業はケースを用いて、通常のM&A取引からMBO、企業再生までM&Aの一通りを学ぶことができます。毎週の宿題として出されるケースでは、投資銀行のアナリスト業務に近いアウトプットが求められ、ファイナンス得意な人でも多くの時間を費やす覚悟が必要です。負荷は高いですが、バリュエーションのみならず、売手/買手間のシナジーの配分やM&A取引の背後にある意図まで、教授がしっかり解説してくれます。この授業は、一通り、DCFやCompsを用いたvaluationsを理解している人向きの授業です。

 

Venture Capital and Private Equity

VCやPEがスタートアップの企業価値をどのように評価するか、という投資家の目線と、アーリーステージの会社がどのように資金調達戦略を組み立てていくべきか、という起業家の目線の双方を持ちながら授業が進められていきます。キャッシュフローが安定しない(あるいはまったく発生しない)アーリーステージの企業価値評価では、伝統的なDCF法は必ずしもベストな選択肢とは言えないため、複数の方法を組み合わせながら実際にどのように実務が行われているかを知ることもできます。また、転換社債やLBOといったファイナンステクニックの基礎や、タームシートの構造・交渉の仕方等、非常に実践的な学びが多かったのも印象的でした。教授陣の1人、Prof. Wangはまだ30代前半と若いながらも非常に聡明かつエネルギーのある教授で、学生からは人気があったように思います。。

 

Corporate Valuation

DCF (Discounted Cash Flow Method), Comparative Company Method, EVA (Economic Value Added) を使った手法など、企業価値評価の理論を体系的に学べるコースです。講義中心の理論学習と理論の適用を学ぶケーススタディのコンビネーションで授業は進められます。また、コースの最後には実際に企業を一つ選んでその価値評価を行うというグループプロジェクトが課されますが、必要なデータ収集から分析、キャッシュフロー予測、ディスカウントレートの算定、そして企業価値の算定という一連のプロセスを実践的に学ぶことができます。但し、Valuationは他のファイナンス系授業(前述の Takeover, Restructuring, and Corporate Governance 等)で取り上げられるので、ファイナンス系科目を中心にとっている方には重複的な部分が多い科目です。

 

Urban Real Estate Financing and Investing

不動産会社を実際に経営している教授が、自分の会社に来た案件をケーススタディとして取り扱い、不動産を買収するべきかどうかを議論する授業。結局は、キャッシュフローを割り引くだけと言ってしまえばそれまでですが、プロの不動産投資家がどこまで考えて、将来キャッシュフローを作成するかについて、非常に参考になります。

 

Behavioral Finance

ファイナンスに行動経済学を組合わせた授業で、人の心理・行動がマーケットの動きにどのように影響するかについて、実際の事例も踏まえつつ様々な理論が紹介されます。例えば、Bad Newsに対して人々がどのように反応しそれが株価にどう反映されるかといったものから、サッカーの試合結果の影響といったものまで、通常のファイナンスの理論だけでは説明が難しい投資家の心理的なバイアスについて幅広く学ぶことができます。

 

Financial Forecasting

ハーフクレジットの授業で、ファイナンシャルモデルを0から作成するための知識を学べます。この授業はFinanceではなくEntrepreneurshipのカテゴリーに入っていることが示す通り、新しくビジネスを始める際に必要なファイナンスの知識を得ることができます。実際にBCOでファイナンシャルモデルを作成する際にとても役立ちましたし、クラスメートもBCO選択者が多かったように思います。

 

Anderson Student Asset Management(ASAM)

​通常の選択科目ではありません。約15人(MBAとFEMBA(夜と週末にクラスがある、社会人向けのMBA)合同のクラス)が1年の春から2年の春まで、1チーム当り約30万ドルを実際に運用するという資産運用の実践クラスです。週1回2時間ほどミーティングを行うほか、企業訪問、ゲストによるレクチャー等もあります。1年の冬に希望者は申込を行い、書類・面接審査を経て選定されます。倍率は3~4倍。コックラムが監修しているSIF(Student Investment Fund)と似ていますが、SIFの個別株ボトムアップ運用とは違い、ASAMはクオンツ運用を行います。運用戦略を学ぶ一方で、売買・運用成績管理・企業訪問・寄付募集等を通じ、実践的なスキルも身につける事も出来ます。なお、担当教授の授業があるわけではなく、原則として自分達で先輩や文献等から自主的に学び、実践するというスタイルとなっています。

 

その他にも、232D: Option Markets - オプション理論とその応用 - など、多岐にわたる授業が提供されています。 

 

更に、授業の他にも、Corporate FinanceのCertificateを管理する施設であるThe Laurence and Lori Fink Center for Finance & Investments (通称Fink) が、ファイナンス関連のスピーカーシリーズやワークショップなど様々なイベントを開催しています。Finkの公式サイトはこちらです。