起業家精神にあふれたLAの空気そのままに、ANDERSONは起業家育成のプログラムが充実していることでも有名です。将来の起業のためのスキルを養成するための授業や、経験を積むためのプログラムが豊富に提供されています。実際にスタートアップで修行することも、年間を通じて可能です。ここでは人気のある授業や在校生が取ってみて面白かった授業に絞って、ご紹介します。(※最新の状況と異なる可能性がある点、ご了承下さい)

 

Entrepreneurship and Venture Initiation (EVI)

新しい事業をどのように起こすし成長させるか - すなわち、ビジネスの機会、起業のプロセス、資金調達、成長戦略、Exit、といった起業に関する様々な検討ポイントを学びます。Term SheetやCap Tableのようなテクニカルな内容から、どのような起業を目指すべきかといった論点まで、幅広い観点が取り扱われるため、アントレの入門編としては最適の授業構成となっています。教授によってスタイルが違うようですが、ここ数年Alderton教授の授業が人気を博しています。基本的には毎週ケースを扱い、Cold Callが行われますが、各週における学生の発言頻度・クオリティを細かく記録され、翌週にはスコアが公表されることとなっているため、緊張感が高く、常にピリピリした雰囲気で授業が進められます。Alderton教授の授業は起業家とVCとの交渉に重きをおいており、起業家が不利にならないようにタームシートのどの項目に気をつけるべきか、といった実践的な内容もかなり学べます。また、実際に起業して成功した起業家がゲストスピーカーとして授業にきて、自分たちが直面した問題とその解決方法について話してくれたりもします。

 

Business Plan Development (BPD)

名前の通り、何らかのビジネスアイディアをもとに、実際にビジネスプランを作成しプレゼンする、という授業です。Funk教授はLA近郊で長年VCでのキャリアを歩んできた実務家です。初回授業時までに4人〜5人のチームを編成し、毎週の課題として、例えば財務の見通しやオペレーションといったプランのパーツ(のドラフト)を作成、それらを元にブラッシュアップして最終的なビジネスプランをまとめあげます。授業の内容は、ケースやリーディングに関するディスカッション、ビジネスプラン作成にあたっての考え方の講義のほか、ほぼ毎回ゲストスピーカーによる講義があります。自身のオリジナルのアイディアが無くとも、既に起業していたり、今後事業化を目指す予定であったりする生徒等もいるので、そういったチームにジョインすることも可能です。幅広い観点からビジネスプランの立案を考えることが出来ますので、アントレの世界の疑似体験として、おすすめいたします。CapstoneでBCOを選択する場合には、BPDの履修が必須となり、BCOで追求したいアイデアをBPDで取り扱うことが推奨されます。

 

Managing Finance and Financing the Emerging Enterprises

通称”Entrepreneurial Finance”として知られるこの授業は、当校の看板授業です。授業の目的は、ニューベンチャーが如何に資金を獲得し、また資金の提供者がその企業に如何にファイナンスするかを学びとることです。授業は全10回、Cold Callを中心に進められ、1回3時間の授業はThree hour interviewと称されるほど緊張の連続です。コックラム教授は実業家として成功をおさめた後その事業を投資銀行に売却し、その後の人生を起業家の指導そして当校での学生の指導に費やしています。その優れた教授メソッドから彼は1996年以来ビジネスウィーク誌でアントレ教授部門の第1位に毎年ランキングされ、伝説化されている教授です。

コックラム教授はファイナンスの看板教授ではありますが、彼の授業はファイナンスの限界を明確に認識させることから始まります。当たり前ではありますが、会社にはそれぞれゴールとそれを実現させるための企業戦略とプランニングがあり、さらにそれを具体化させるためにマーケティング、オペレーション、アカウンティング、ならびにファインスがあるに過ぎないということがベースにあります。要するにビジネスの諸問題をファイナンスの観点からのみ解決しようとすることは所詮無理であり、あくまでファイナンスは企業のゴールと企業戦略を実現させるためのーつのツールに過ぎないという立場をとっています。一方で、ファイナンスを深く理解できればマーケティングやオペレーション、あるいはアカウンティングといった他のツールに帰属する諸問題をある程度理解することも可能であり、そういう観点からもファイナンスは企業戦略、ゴール実現には不可欠なもであるというのがコックラムの基本的な考え方です。

こうした基本的な考え方をベースに各企業の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、将来におけるビジネスチャンス(Opportunities)、それに対する脅威(Threats)を深く分析(SWOT Analysis)した上で、それらに最適なファイナンス手法を追求してゆきます。また、特にアントレプレナーファイナンスの過程においては、”Never run out of CASH”という極めて基本的なことが強調され、キャッシュを切らさないためにどのような選択肢があり、どれが最も現実的で即効性があるのかを追求します。

毎週のケースについてチームで予習・復習が義務付けられるなど、タフな授業であることは間違いないですが、数字を通してビジネスの実態を把握する力が間違いないつく授業だと思います。

 

Managing Entrepreneurial Operations

毎年春学期に提供されるこのコースは、起業家たちが事業の運用、操業で直面する多様な問題を探求、検証していきます。数多くのケースを通して、次のようなトピックを順番に検討していき、起業家として要求される、スキル、フレームワークを身に付けていきます。例えば、1) 起業前の意思決定がOperationに与える影響、2) 起業時に遭遇するOperation上の問題と機会、3) 事業の成功がもたらすOperation上のストレス、4) 逆境を勝ち抜くプロセス、について学びます。

 

Entrepreneurship through Acquisition: Search Fund

最近日本でも組成されつつあるサーチファンド(Entrepreneurship through acquisition)に関する授業です。そもそもサーチファンドについての情報はあまりないこともあり、キャリアとしてサーチファンドを検討する上では必須の講義です。サーチャー経験者やファンドオブサーチファンド、サーチファンド投資家がゲストスピーカーとして登壇する上、彼らの事例をケースとして取り扱うことが多くなるので、成功例失敗例を含め、実際にサーチファンドを始める上で押さえておかなければならないリスクや成功要因を学ぶことができます。ゲストスピーカーも非常にサポーティブですので、サーチファンドのコミュニティとのコネクションを獲得するにも非常によい機会となります。

 

Developing an Entrepreneurial Mindset

2021年から新たに開講された授業です。成功した元起業家2人が教鞭を取り、ケーススタディとスピーカーセッションを中心に進められます。授業の内容は、アイデアをどのように見つけるか、チームをどのように作るか、企業風土がいかに重要か、スケールさせていく上での注意点は何か、等、起業のライフサイクルに沿って、起業家が知っておくべき・意識しておくべきポイントを網羅しています。スピーカーは若い起業家、または起業家のメンター的な方が多く、ケース等で学ぶコンセプトが実際の起業経験とどのようにリンクしているか、を体感することができます。最終課題では、自分の今後のキャリアについて考える機会が与えられます…自分は起業家になるのか、投資家になるのか、または、スタートアップで従業員として働くのか。起業に漠然と関心があるけど、具体的なイメージが湧いていない方にはおすすめの授業です。

 

Corporate Entrepreneurship

Touch Down VenturesというVCの面々がリードする授業で、主なフォーカスは「大企業がイノベーションを起こすには」という、Andersonのアントレ系の授業の中ではややユニークな授業です。pdfのAdobeやシリアルのKellog、ビールのCarlsbergなど、誰もが知っている有名企業のケースが登場し、各々の会社がどのように社内で革新的なアイデアを進めていったのか、スタートアップと大企業の連携はどのようにあるべきか、イノベーションのための戦術(R&D・インキュベーター・M&A等)はそれぞれどのような場面で効果を発揮するのか、等を学んでいきます。例えば、日本からの社費生で、会社に戻って新規事業を推進する取組がしたい、等の目標を持っている方にはピッタリの授業かと思います。同じような意識で参加しているFEMBA(働きながらパートタイムでMBAに通っている方々)も多くいるので、知り合いの輪を広げるチャンスでもあります!

 

授業の他にも、EntrepreneurshipのCertificateを管理するPrice Centerが、Andersonの有名なビジネスコンペであるKnapp Venture Competitionに加え、アントレ関連のスピーカーシリーズや交流イベントなど様々なイベントを開催しています。Price Centerの公式サイトはこちらです。